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秋の北東北03・・・五能線 「リゾートしらかみ」乗車記 [鉄道旅行記]

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2011.11.03~05
秋の北東北03
五能線 HB-E300系「リゾートしらかみ」 乗車
  

北東北を訪れている、秋の鉄道旅。前回からの続きです。
大館で迎えた二日目は早朝から陣場のお立ち台でブルトレ撮影。まずまずの成果に満足して大館駅へと戻ってきました。「撮り鉄」のために借りたレンタカーを返却し、ここからはいつもの鉄道移動に戻ります。とはいうものの、前々回の冒頭にも書いたように、突如舞い込んだ連休に食いついて、飛び出したような今回の旅。ブルトレ撮影のあとの予定は何も考えていませんでした。引き続き、奥羽本線で特急「つがる」や貨物列車の「撮り鉄」をするって手もあるけれど、それならばレンタカーを返さずに延長した方が効率が良かったはず。それに、今回はせっかく北東北のJRがフリーで乗れる「北東北・函館フリー乗車券」を使っているので、少しは「乗り鉄」しなきゃもったいない。やはりこのあとは、のんびりと北東北のローカル線で「乗り鉄」を楽しむことにしました。

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今回の旅で使用した「北東北・函館フリー乗車券」。
北東北・函館エリアの普通・快速が乗り降り自由のフリーきっぷで、
別に特急券を購入すれば新幹線・特急も利用できます。

では、今いる大館を起点として考えられる乗り鉄候補のローカル線を挙げると、ここ大館から八幡平を通って岩手の好摩へ至る花輪線か、奥羽線の東能代から日本海沿いに北上して青森の川部までを結ぶ五能線あたりが妥当なところ。前回でも触れた二年前に大館を訪れたときには、ブルトレ撮影後に花輪線で盛岡へ出て(好摩~盛岡はIGRいわて銀河鉄道線)、東京へ戻っています。ならば、今回乗る線は五能線に決定。そこでまずは大館駅のみどりの窓口へ。五能線は普通列車の本数が極端に少なく、全線を乗り通すには観光列車の快速「リゾートしらかみ」をうまく活用したいところ。「リゾートしらかみ」は全席指定なので、まずは指定券を手に入れなくてはなりません。やはりここは海に面した窓側の「A席」を選びたい・・・いや、「A席」以外は考えられない。五能線の魅力は車窓に広がる雄大な日本海の景色。海側に座らなければ意味が無いと言っても過言ではないのです。ところが・・・「本日のA席は満席ですね」という窓口氏のお言葉。飛び石連休の狭間の平日なので空いていると思ったのですが、考えが甘かった。うーん、どうするかな・・・と悩んでいるうちに、奥羽線上り列車の発車時刻が近づいてきました。

大館1003-(奥羽1646M)-東能代1050

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大館から東能代まで乗った701系の普通列車。
前日に「こまち」を降りて以来、久々の列車移動で、
ようやく東北の鉄道旅を実感しています。
11.11.4 奥羽本線 東能代

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この東能代のホームにはちょっと面白いモノがあります。
それはこの「リゾートしらかみ(くまげら)」を模した待合室。
ただ壁面に列車の絵が描かれているだけかと思いきや、実は・・・↓

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なんと待合室内の窓部には本物の運転台が設置されているのです!
もちろん前面の景色は動きませんが、マスコンやブレーキを握れば、
気分は五能線の運転士!? これは楽しい待合室です(^▽^)
11.11.4 奥羽本線 東能代

とりあえず五能線の起点駅・東能代へ。実は乗ろうと考えていた「リゾートしらかみ3号」の一本前には、途中の深浦まで行く普通列車「321D」があります。普通列車ならば、もちろん全車自由席。この列車で全線を乗り通すことはできないけれど、深浦までは海側の景色が堪能できます。それに五能線のようなローカル線は、できれば観光列車ではなく地元の方々が使う普通列車で楽しみたいもの。まずはこの321Dに乗って、途中駅まででも五能線普通列車の魅力を存分に味わおうと思います。

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非電化ローカル線の普通列車といえば、おなじみのキハ40。
ホワイト&ブルーが五能線カラーです。
11.11.4 奥羽本線 東能代

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キハ40の室内は、直角のボックスシートが並びます。
海側の席が空いているか心配でしたが・・・見事に誰もいません(^^;)

東能代で発車を待っていた321Dは、二両編成のキハ40。乗客は片手で数えられるほどで、私が乗った後方の車両には他に誰も乗っていませんでした。嬉しいのか悲しいのか「リゾートしらかみ」では取れなかった海側の席も選びたい放題です(笑)。次駅の能代から地元のおばちゃんが三人ほど乗ってきて大声で話し始めますが、こんな光景も普通列車ならでは。それにしても、このあたりの方言はいったい何を話しているのかサッパリ解らないほど難しい・・・。東能代から6駅目の東八ツ森を過ぎたあたりから車窓に海が見え始め、やがて列車は海岸線にぴったりと沿うように走ります。

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途中の岩館では「リゾートしらかみ2号」と交換。
白神山地をイメージした緑色の車両は、
キハ48からの改造車で「橅(ブナ)編成」。
11.11.4 五能線 岩館(車窓から)

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短いトンネルを抜けると・・・そこには青い海が広がります!
うーん、気持ちイイ (゚∀゚)!!
11.11.4 五能線 岩館-大間越(車窓から)

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ここで大館で買っておいた、名物駅弁「鶏めし」をいただきます。
シンプルですが、鶏のダシ汁で炊き込んだご飯がとてもウマイ!
五能線の景色を見ながらこのお弁当が食べられるとは、
最高に贅沢な汽車旅です・・・。☆☆☆☆☆

岩館でおばちゃん連中が降りると、再び一人に。乗客がいなかったので、ちょっと窓を開けて外の空気に触れてみると、海風の匂いが心地いい。カーブが続く海岸線をゆっくりゆっくりと進むキハ40。本当にのんびりとした汽車旅だなぁ・・・。ところが、列車が十二湖駅に入ると、なんとそこにはホームいっぱいの乗客が待っているではありませんか。慌てて窓を閉めると同時に客が車内へとなだれ込み、一気に座席は埋まりました。相席になった老夫婦が見ていたパンフレットを横目で覗くと、どうやらこれは某大手旅行会社が企画した北東北の観光地をバスで巡るツアーで、そのなかに「人気の絶景ローカル線・五能線に乗車」というプランが組み込まれています。つまり、白神山地や十二湖を観光バスで巡り、十二湖の駅から深浦まで五能線に乗車。深浦に先回りしているバスに再び乗って次の目的地へ・・・という行程らしい。やがて添乗員らしき若い男性が人数をチェックしながら現れて、「みなさーん、海が見えるのは向かって左側の席でーす。譲り合って見てくださーい。降りるのは終点ですので慌てる必要はありませーん」などと声を上げて案内しています。譲り合って・・・と言われても、はじめから海側に座り、ツアー参加者ではない私は関係ないのですが、何となく居心地が悪い。こういう場合、定期列車でも後ろ一両を団体の貸切扱いにするとかで対応できないものなのだろうか・・・(-"-;)。のんびりしていたローカル線は途端に観光バスと化し、なんだかテンションを落とされたまま、列車は深浦に到着。ツアー客は小さな深浦駅に横付けされた大型バスに乗り込み、慌しく去ってゆきました。

東能代1057-(321D)-深浦1242

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五能線のほぼ中間に位置する主要駅・深浦。
駅舎は以前に訪れたときよりもだいぶきれいな外装になっていました。
これも観光地パワーなのでしょうか・・・。
11.11.4 五能線 深浦

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深浦の駅前には、日本海の美しい景色が広がります。
水が透き通っていて、きれいな海ですねぇ・・・。

待ち時間の50分ほどを深浦の町散策でつぶし、さらに五能線の旅を続けます。しかし五能線を乗り通すのにいちばんネックとなるのが、この先の深浦から鯵ヶ沢までの区間。定期の普通列車は一日わずか5本で、次の列車は四時間半後の17時08分。いくら普通列車好きとはいえ、さすがにそこまで待つのはツライし、そもそも今の時期17時発の列車ではせっかくの景色が何も見えません。そこで、ここから乗るのが前述した「リゾートしらかみ」。海側の指定席は取れなかったけれど、深浦までの普通列車で海景色は堪能できたので、もうじゅうぶん。あとは山側の席(D席)でもいいやと思ったのです。深浦のホームで指定券片手に待っていると、やがて五能線らしからぬ軽やかなジョイント音を響かせて現れたのはこの車両。

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「リゾートしらかみ3号」は新型のHB-E300系。
この車両に乗るのは初めてなので、ちょっと楽しみです。
11.11.4 五能線 深浦

従来の「リゾートしらかみ」は、先ほど岩館で交換した「橅編成」のようにキハ40などの一般形気動車から改造されたものでしたが、この「リゾートしらかみ3号」に使われる「青池」編成は、新型の次世代型ハイブリッド気動車・HB-E300系。ディーゼルエンジンと蓄電池を組み合わせたハイブリッドシステムは燃費が良く、窒素酸化物の排出量を約60%も低減できる利点があるのだとか。難しい仕組みは置いておいて、要は地球に優しいエコな車両って事。そんなHB-E300系は、この五能線以外にも大湊・津軽線の「リゾートビューあすなろ」や篠ノ井・大糸線の「リゾートビューふるさと」でも同様の観光列車として運転されていますが、私は今回初めて乗ることになります。HB-E300系の「リゾートしらかみ3号」は定刻に深浦を発車。気動車とは思えない静かな走り出しに、さっそく驚きです。

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リクライニングシートが並ぶ「リゾートしらかみ」の車内。
手前の背もたれを倒したところが私の指定席で、3号車1番D席。
海側は満席でも、山側の席はガラガラ・・・(^^;)

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私の席は山側ですが、
ラッキーなことに、すぐ目の前にはフリースペースがあり、
海側に面したベンチシートが空いていました。
ずっと占領しているのはよくないけれど、
しばらくはここで海景色を楽しめます。

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深浦を出た「リゾートしらかみ」は
まもなく五能線随一の絶景ポイントに差し掛かります。
日本海の荒波に削られた奇岩の数々は、いつ見ても迫力満点!
でもUVカットガラスのせいで、ちょっと色が変・・・。
11.11.4 五能線 深浦-広戸(車窓から)

「リゾートしらかみ」は景色のいいところでは速度を落として、車窓風景を楽しませてくれます。ご覧のようにこの日は抜けるような青空が広がる快晴。車窓から眺める景色も気持ちいいのですが、ここまでいい天気だと、乗っているよりも外からこの景色のなかを走る列車を撮りたくなってしまいます。絶景路線として名高い五能線。乗り鉄はもちろん、撮り鉄にとっても、ひじょうに魅力的な路線です。いつかはじっくりと沿線で撮影したいと考えていますが、そういうときに限って天気に恵まれないものなんだよなぁ・・・。

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岩畳が広がる千畳敷海岸。これは車窓風景ではありません。
「リゾートしらかみ」は、千畳敷駅で20分ほどの停車時間が
設けられているので、駅前の海岸へ出て楽しむことができるのです。
発車三分前に汽笛が鳴らされ、それを合図に列車へ戻ります。
11.11.4 五能線 千畳敷付近

列車は長い時間に渡って海沿いを走り続けてきましたが、行程の三分の二ほどを過ぎた鯵ヶ沢を出ると線路から海は離れてしまい、車窓は単調な景色となってしまいます。しかしここで乗客を飽きさせないのが、この観光列車「リゾートしらかみ」。鯵ヶ沢から五所川原までは、車内のフリースペースで津軽三味線の生演奏が催されるのです。これは観光客には嬉しいサービスでしょう。しかし、正直言ってのんびりと静かに列車旅を味わいたい私のような偏屈者にとっては、失礼ながらあまり関心がなく、今までも何度か「リゾートしらかみ」に乗りましたが、わざわざイベントスペースまで行って生演奏を見ることはしませんでした(イベントスペースへ行かなくても、スピーカーで車内には演奏が流れます)。ところが今回は・・・そう、前述したように、私の席のまん前がそのイベントスペース。さすがに一番前にいて見ないわけにはいかないし、拍手だってしなければ失礼。こりゃ、ちょっと厄介な席だな・・・なんて、つい思ってしまいました。しかしいざ演奏が始まると、津軽三味線の力強くも透き通るような音色は、車窓を流れる津軽の素朴な風景によく合い、決して悪くはありません。三味線に耳を傾けながら、ビールをゴクリ。ここは日本酒を買っておくべきだったなぁ・・・などと思うほど、いつしか車内で楽しむ三味線というものを受け入れていました。「観光列車」として割り切ってしまえば、こういう楽しみ方もいいかもしれませんね。それでも、やはり私は普通列車の方が好きですが・・・。

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流れる車窓を横目に行われた津軽三味線の生演奏。
津軽三味線には楽譜はなく、即興で演奏するのだそうです。
なのに、お二方の息はピッタリで、感心させられました。

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三味線の音色が車内に響く頃、車窓には津軽の名峰・岩木山の姿が。
いつもは海側に座るので、ここから岩木山を見るのは初めてかも。
奥羽線側とは逆から見る岩木山は、ちょっと新鮮だったりします。
11.11.4 五能線 陸奥森田付近(車窓から)

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津軽鉄道との接続駅・五所川原に到着した「リゾートしらかみ」。
三味線の演奏は、ここ五所川原まで。
11.11.4 五能線 五所川原

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西日を浴びて待機する、津軽鉄道・津軽中里行き。
そろそろ名物の「ストーブ列車」が運転される時期ですね・・・。
11.11.4 津軽鉄道 五所川原

三味線の生演奏が終わり、五所川原を出ると五能線の旅も終盤。今度は車窓に一面のりんご畑が広がります。このりんご畑の中を行く列車の姿も五能線を代表する風景のひとつで、たわわな赤い実をつけた今がちょうど見頃でした。そのりんご畑を抜けると、五能線の終点・川部着。

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車窓から見たりんご畑。写真は夕暮れ時で流れてしまいましたが、
赤い実をつけたりんごの木が、何となく伝わるかと思います。
11.11.4 五能線 板柳-林崎(車窓から)

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深浦から二時間。川部に到着した「リゾートしらかみ」。
11.11.4 奥羽本線 川部

深浦1333-(リゾートしらかみ3号)-川部1540

これで147.2キロにもおよぶ、五能線の旅は終了です。はじめは海側席が取れずに、乗ろうか悩んだ五能線ですが、途中の深浦で乗り継いだことで「リゾートしらかみ」を乗り通すよりも、かえって変化のついた旅になったのではないかと思っています。久々に乗った五能線ですが、やっぱり「絶景ローカル線」の名に相応しく、素晴らしい車窓からの眺めでした。
「リゾートしらかみ3号」は、川部からこのまま奥羽線の上りに乗り入れて弘前まで行きますが、私は川部で下車して奥羽線の下り列車を待ちます。向かうのは今宵の宿泊地、青森。

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青森行きの奥羽線から見た、岩木山の裾野に沈む夕陽。
朝のブルトレ撮影から始まり、五能線の全線乗車。
まさに鉄道三昧の一日でした。
11.11.4 奥羽本線 北常盤-浪岡(車窓から)

川部1612-(奥羽663M)-青森1655


・・・続きます



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