ONE-shot 103 「船橋線」の臨時列車。 [PICK UP ONE-shot]
子供の頃から鉄道好きだった私にとって、
憧れのひとつだったのが、定期券で通う「電車通学」。
小・中学校が家から徒歩で通える近さだったこともあり、
高校は絶対に電車で通学できるところを・・・と考えていました。
しかし県外の高校となれば、私立でお金がかかるし、
「通学定期が欲しいから県外の私立に行きたい」なんて志望動機は、
当然ながら親に認められるはずもありません。
そもそも出来の悪い私の頭では通学方法で学校を選ぶような余裕はなく、
結局、与えられた選択肢は近場にあるいくつかの公立高校でした。
それでも私は通学定期への夢が捨てきれず、
選択肢のなかで唯一電車通学が可能な学校を受験し、合格。
晴れて人生初となる定期券を手に入れることができたのです。
ただし、その通学区間は東武野田線のわずか数駅。
同じ東武でも特急や急行が走る伊勢崎線や東上線などとは異なり、
通勤形の普通列車ばかりで何も面白味が無い野田線。
しかも私が通っていたのは、そのなかでもさらに地味な
通称「船橋線*」と呼ばれる区間で、
いくら憧れの電車通学とはいえ、ひと月も通えば飽きてしまい、
当時の私は「日本でいちばんツマラナイ路線の定期」を持ってしまった・・・
と、嘆いたものでした (おーげさだね ^^;)。
あれからウン十年・・・
なんと、その地味な船橋線に臨時の特別列車が走るというではありませんか!
これは当日に伊勢崎線・南栗橋の車庫で行われる一般開放イベント
「東武ファンフェスタ」への団体輸送で、船橋から南栗橋までの運転。
使用されるのは旧塗装の復刻色で人気を集めている8000系の8111Fです。
船橋線の元・通学利用者としては、これを見逃すわけにはいきません。
ネットを検索してもあまり撮影地がヒットしない船橋線ですが、
私には一カ所、キレイに撮れそうな場所の心当たりがありました。
それは高校時代、毎日車窓から眺めていた抜けの良い築堤で、
いいポイントだけれど船橋線じゃ撮る気がおきないと、
当時はまったく見向きもしなかった場所。
しかし何十年も経った今でも、果たして撮影はできるのだろうか・・・?
期待半分、不安半分でその撮影地へと向かいます。
すると、そこにあったのは昔とまったく変わらない情景。
これには思わず、懐かしさよりも嬉しさが沸いてきます。
ここは編成撮りもじゅうぶんに可能な撮影地ですが、
私にとっては想い出深いこの場所の雰囲気を少しでも表現したくて、
あえて引き画で狙ってみることにしました。
周りには誰もいない、私だけのフェイバリット・ポイントを
軽やかに駆け抜けてゆく、復刻色の8111F。
まさか高校を卒業してからウン十年も経ったあとに、
ここで撮影することがあろうとは、思ってもみなかったなぁ・・・。
12.12.2 東武野田線 高柳-逆井
* 東武野田線は埼玉の大宮から千葉の船橋へと至る路線ですが、
途中駅の柏が頭端式のスイッチバック構造となっているため
大半の列車が大宮~柏と柏~船橋で運行区間が分けられ、
柏を境に大宮方面をそのまま「野田線」、
船橋方面は通称で「船橋線」と呼ばれることがあります
(ただし沿線民や利用者は船橋側でもフツーに野田線と呼ぶことが多く、
私も船橋線とはほとんど言いません。
この通称は業務用か、ファンが付けた呼び名なのかな?)。