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中央本線・・・E655系「お召し列車」撮影記 [鉄道写真撮影記]

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2012.10.06
中央本線
緊張!緊迫!感動!
E655系「お召し列車」 撮影
  

昨年11月、中央線・東京~甲府で運転されたE655系による「お召し列車」。これは恩賜林(明治天皇が水害からの復興支援のために贈った森林)が贈られて100周年になるのを記念する式典が山梨・甲府で開かれ、当初はその式典に天皇陛下がご出席する予定で仕立てられたものでした。しかし直前に陛下は体調を崩されて入院。一時はお召し列車も運転自体が危ぶまれたものの、式典にはご名代として皇太子殿下がご出席されることになり、殿下を乗せた日章旗付きのお召し列車は無事に秋晴れの中央線を快走しました。私はその様子を立川~日野にある多摩川の鉄橋で撮影し、このブログでも「ONE-Shot」として紹介したのは記憶に新しいところです。あれから一年、体調が戻られた天皇陛下は昨年に見られなかった恩賜林の視察をご希望され、それが実現。なんと昨年に続き、今年の秋も中央線の東京~甲府でお召し列車が運転されることとなりました。果たせなかった訪問先へあらためて足をお運びになるとは、律儀で本当に頭の下がる思いです。ご訪問の日取りは10月6日(土)、日帰りの行幸啓。三連休の初日ですが私は遠出をせず、もちろん今年もお召し列車撮影に参戦します。


10月6日(土)

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まずは地元駅から中央線を下って八王子へ。
甲府方面(山線)への接続列車は立川か高尾のイメージが強いのですが、
この松本行き429Mは八王子始発でした。
連休初日ということで、ホームには登山などへ向かう行楽客がいっぱい。
中央本線 八王子

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八王子にはお召し列車の非常時救援機として、
ピカピカに磨かれたDD51 842が待機していました。
あくまでも救援機なので、出番がないことを願います。
中央本線 八王子

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そのDD51 842とE655系が組んだらどんな編成になるのか・・・それがコチラ。
07年暮れに東北本線で行われた、訓練運転での一コマです。
とくに今回のお召し運転には関係ないのですが、なかなか紹介する機会もないので、
オマケ的に載せてみました。(^^;)
07.12.25 東北本線 東大宮-蓮田

お召し列車の撮影でいつも悩むのが撮影場所。というのも、当然ながら天皇陛下がお乗りになる列車は警備も厳戒態勢が敷かれて、普段撮っているような臨時列車の撮影とはわけが違います。鉄道敷地内はもちろんのこと(これは普段でもダメですよね)、線路に近いかぶりつきの撮影地や踏切、跨線橋なども場所によってはアウト(撮影禁止)になる場合があります。その裁量はその場の警察や鉄道会社の判断によるものが大きく、一概にすべてがダメということではないけれど、撮れると思ってカメラを構えていたのに、通過直前になって警察から「ここでは撮れない」といわれて、移動を余儀なくされた・・・というのもよく聞く話。そんななか、比較的引きがあって見通しが利く多摩川橋梁などはまず間違いなく撮影が可能なポイントで、昨年は無難にここで撮影をしました。さて、今年はどこにするか・・・昨年と同じ多摩川じゃ面白くない。かといって、首都圏近郊は高架区間が多く、高尾以西は山間部を走る中央線には、東北線のヒガハスや高崎線のオカポンのような編成が解りやすい引き絵の撮れる場所が少ない。線路かぶり付きポイントは前述したように、どこがOKで、どこがアウトか解らんしなぁ・・・"o(-_-;*) ウゥム…。多摩川以外でパッと頭に思い浮かんだのは、鳥沢~猿橋にある新桂川橋梁。あそこなら撮影は大丈夫だろうし、キャパも広い。しかしそうすると私が撮ったE655系のお召しは、前回の多摩川、そして08年に常磐線で運転された際に選んだ利根川橋梁と、三回とも鉄橋での撮影ということになってしまいます。鉄橋が撮りやすいのはたしかだけれど、今回はちょっと絵を変えたい。そこで最終的に私が撮影地に選んだのは初狩。

八王子0635-(中央429M)-初狩0726

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初狩はホームと駅舎の間に引込み線があるちょっと変わった駅。
昔は勾配のある本線上ではなく、この駅舎に隣接した引込み線の位置に
ホームがあり、列車はスイッチバックを経て停車していました。
旧ホーム廃止後は貨物の留置線などに活用されていたようですが、
現在は使用されていない様子。
上写真はホーム地下通路出口から見た駅舎で、
下の写真は逆に駅舎側から見たホーム。
(駅舎の外観はタイトル写真を参照)
中央本線 初狩

初狩で降りるのは、中央線201系最後の編成であるH7編成のさよなら運転を見送って以来二年ぶり。はじめはそのH7を撮った場所もお召し列車撮影の候補地として考えていたのですが、あそこは敷地外ではあるものの、線路に近い場所から正面気味に狙うことになるため、アウトになる可能性があります(実際は撮影OKだったらしい)。ここでもなるべく無難にと考えて向かったのは、駅から15分ほどのところにある高台の撮影地、いわゆる「お立ち台」ポイント。お召し列車を上から見下ろすのはちょっと気が引けますが、まあここなら撮影自体はOKでしょう。

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1903年(明治36年)の開業時に作られたと思われる
狭いレンガ造りのアーチトンネルをくぐると・・・

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山の中腹にあるお立ち台が見えてきます。
すでに多数の同業者が見られますが、まだ余裕はありそう。

撮影地にはお召し列車通過の三時間半前に到着。ここもキャパは広く、撮影場所は難なく確保することができました。非鉄の方ならば三時間以上も前に!? と驚かれるかもしれませんが、お召しの場所撮りとしてはこれでも遅い方で、なかには前日入りで現地マルヨ(徹夜)なんていうツワモノもいらっしゃいました。それにこのブログでもたびたび取り上げているように、休日の中央線は臨時列車が多数運転されていて、長い待ち時間もそれほど退屈しません。同じアングルばかりになりますが、ここでは時間の経過とともに現れたいくつかの列車をピックアップしてみます。

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まずはEH200-20牽引のタンカー貨物。
貨物に疎い私にとっては貨物列車もじゅぶんにネタです。
中央本線 初狩-笹子 (8:46)

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土曜休日運転、横浜から横浜線経由で運転される
松本行きの特急「はまかいじ」は、
中央線を走る貴重な185系の列車です。
線路脇の小道はこの撮影地へ続いていて、向かってくる同業者の姿が・・・。
(9:21)

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三連休初日であるこの日は、183系大宮車による
特急「かいじ183号」が運転されました。
絵幕ではなく「特急」表示なのがちょっと残念。
(9:50)

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スカ色の115系は意外と少なく、後追いしか撮れませんでした。
この列車は初狩10時05分着の536M。
(10:04)

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そのかわり長野色115系はたくさんやってきます。
思いがけず長野色同士のすれ違いなんてシーンも撮れちゃいました。
房総から転属した211系が運用を開始したら、貴重になるかも?
(左・538M/右・531M 10:19)

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再び国鉄色183系の登場。今度は田町車による特急「あずさ75号」。
この撮影地、10連の長い編成は全部入りきりません・・・。
(10:35)

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国鉄色の4分後には上り線を「あさま色」189系が通過。
これは夜行列車「ムーンライト信州」の送り込み回送。
(10:39)

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臨時列車のシメは、215系のホリデー快速「ビューやまなし」。
連休で、二階建て車両にたくさんの客が乗っていました。
(10:41)

・・・と、まあこんな感じで、まさにひっきりなし。たとえお召し列車が無くても、これだけの国鉄形やら貨物列車が撮れればけっこうオナカいっぱいで、関西から来られたという隣人は「スゲーなぁ、中央線!(°◇°;)」と、驚かれていました。ところで、時間は前後しますが、お召し列車通過の約二時間前、まるで臨時列車の合間を縫うかのように線路脇の小道に現れたのは警察の方。

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撮影地へ向かって、おまわりさんキター(゚∀゚)!
(8:50)

警察と聞いて撮影地全体に緊張が・・・ということはなく、むしろ待ってました状態。やっぱりお召し列車撮影はこうでなくちゃ(´∀` )。昨年の多摩川でも警察の方はいましたが、横で警備する程度で細かいことは何もありませんでした。ところが今年は違います。撮影に対しての注意事項にはじまり、なんと一人ずつの荷物検査。さらにカメラのチェックとして、デジカメはシャッターを切り(空切り)、空切りするのがもったいないフィルムの入っている銀塩カメラに対してはレンズを外して本物のカメラ、レンズかどうかをチェック。う~ん、気合い入っているなぁ大〇警察署。この撮影地で告げられた注意事項の主なものとしては、「斜面は滑り落ちる危険があるので三脚等を立てないこと。あくまでもここは私有地であり、地主さんがいるので節度のある行動をとること。その他、警察側で危険だと感じるようなことがあればその注意に従うこと」等々。ここは比較的線路から離れているので、お召し列車に対する直接的なものはありませんでした。

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地元警察による注意事項の説明。
(8:55)

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さらにひとりひとりの荷物検査とカメラチェック。
(9:27)

警察による荷物チェックとはちょっと仰々しいですが、対応するおまわりさんはとても物腰が柔らかな方で、こちら側も終始笑顔。「あ、国鉄色が来たからチェックちょっと待って!」なんてことがあると、現場にも笑い声が上がります(^▽^)。でも、ここまで細かいチェックを受けるのは久しぶりのことで、私は両毛線で運転された96年のお召し列車以来かな・・・。

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警察のヘリが飛び、周辺は上空からも監視されています。
(10:17)

警察のチェックを受け、前座(?)となる臨時列車もすべて通過しました。あとはいよいよ本命のお召し列車を待つばかり。天気の方は臨時列車の羅列を見ていただければ解るよいうに、晴れたり曇ったりを繰り返しています。ここは順光ポイントなので、できれば晴れてほしかったところですが、雲は抜けそうで抜けない・・・。そこへ前走りの「スーパーあずさ11号」が通過。

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お召し列車直前のE351系「スーパーあずさ11号」。
これはいわゆる「露払い(本列車の通過前に線路上に
問題がないことを確認する)」になるのかな?
(11:03)

残念ながら日差しはもう期待できないものと考え、少し感度を高めに設定(ISO400)して本命の登場を待ちます。たくさんの同業者が集まったお立ち台は水を打ったような静けさとなり、ピーンと張り詰めた空気のなか固唾を呑んで線路を凝視していると、やがて日章旗を掲げた壮麗な列車が姿を現しました。

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天皇、皇后両陛下を乗せたお召し列車が
初狩の町を背に中央線を走り抜けてゆきます。
これぞE655系「なごみ」の晴れ舞台!
(11:18)

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特別車(E655-1)には陛下のお姿が!
高いところから失礼いたします。m(_ _)m
(トリミング済み) (11:18)

ああ、感激・・・: *:・(*´∇`*).・: *:・。結局、日は当たらなかったけれど、日章旗をはためかせたお召し列車が撮れ、さらにほんの一瞬、肉眼で天皇陛下のお姿が確認できただけでもじゅうぶんに満足のいく結果となりました。お召し列車撮影は写真の出来よりも、この緊張の中で撮影できたという達成感がいちばんの醍醐味なのではないでしょうか。何よりもここに集まった皆さんが見せた安堵の笑顔がそれを物語っているように思いました。

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お召し列車の直後には緊急時の予備車であるE257系(M102)が通過。
最近はこちらを「露払い」と呼ぶ声も聞かれますが、
本来、露払いの意味は貴人を先導するものの意味であり、
横綱土俵入りなどでも先導するのが露払いの役目。
本列車の続行で走る予備車は、さしずめ「太刀持ち」といったところか?
(11:23)


初狩1153-(544M)-高尾1245


さて、冒頭でもちょこっと触れたように今回のご訪問は日帰りの行幸啓で、お召し列車は当日中に復路(甲府~東京)も運転されます。しかし甲府の発車時刻は17時半と遅く、今の時期ではすでに日没後。これでは走行写真を撮るにはかなりキビシイ。さらにお召し列車は基本的にノンストップで(今回の場合は新宿のみ一分停車だったかな?)、駅での停車シーンもほぼムリ。ふつうならここで復路はあきらめて、往路に撮った写真を肴に家で一杯やるところですが、今回の運転は何と言っても地元の中央線。家から数分のところをお召し列車が通過するのに、のんびりと酒などあおっていられるか!ヽ(#`Д´)ノ ・・・ってことで、無理は承知の上で復路の列車も狙いに行ってしまいました。とはいえ、当然ながら外はもう真っ暗。やはりふつうには撮れません。そこで目をつけたのが、中野駅北口にあるペデストリアンデッキ。ここはつい三ヶ月前にできたばかりのスペースで、実は中央快速上り線ホームと目線の高さがちょうど同じくらい。編成がきれいに入るようなところではないけれど、日章旗を掲げた先頭部くらいは何とか捕らえられそうです。いちおう通過の一時間前に着いてみるも同業者の姿はナシ。やはりこんな場所で撮る酔狂なヤツなど他に居まい・・・と思っていたら、なんと後からもう一方だけ同じ考えの方がいらっしゃいました w(°o°;)wオオ!!。先方もこんなところに同業者がいるとは・・・と、ちょっと驚かれた様子。

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まずはE233系の快速で試し撮り。
でも中野に停車する快速や特快は速度が遅く、
あまり参考にはなりません。。。
中央本線 中野 (18:26)

日没後に通過するお召し列車を撮影するのはこれが初めて。やはり昼間同様に警察のチェックなどが入るものなのだろうか? しかし辺りに警察官の姿は見えない。ここは撮っちゃダメって言われるのは困るけれど、まったく来ないのも拍子抜けだなぁ・・・などと思っていた矢先、不意に背後から初老の男性に 「どうです、ここはうまく撮れそうですか?」と声をかけられました。背広姿のこの方、一見するとくたびれた課長クラスのおっさん(失礼!)なのですが、「何を撮っているのか?」とは聞かないところをみると、事情を知っている者の様子。かといってカメラは持っておらず、同業者ではない。白髪の間から出ているのはイヤホンのコード・・・そう、この方こそ私服警察官なのでありました。しかも無線で 「おい〇〇号、アカトウ(赤灯)は消して待機だろ!」などと指示しているところを見ると、かなりエライ方みたい(パトカーが目立たなかったのは赤色灯を消していたのですね。よく見ると駅前に数台が確認できました)。さえない課長から一転、まるで刑事ドラマに出てくる味のあるベテラン刑事といった感じに見えてきました・・・。その初老デカさんに、念のためここで撮っても大丈夫かと尋ねると、問題ないとのこと。さらに正確な通過時間も教えてくれました。それによると中野は19時07分通過、新宿が同13分着で、本列車はすでに八王子を定時に通過したとのこと。う~んスゴイぞ、さすが初老デカ!ヽ(*´∀`*)ノ

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E257系の特急「かいじ120号」。
このくらい写し止められれば上出来なんだけど・・・。
(19:02)

19時02分、定時に「かいじ120号」が通過。高尾より手前の山線区間ではこの列車が露払いの役割を果たしているはずですが、運転本数が密集する近郊区間ではこの後にもう一本、中野19時06分発の快速電車(1806T)が入ります。定期列車のわずか一分続行で運転されるお召列車、通過列車であってもそれほど速度は出さないかな? でも新宿まで5~6分はふつうの快速電車ペースか・・・いろいろな思考がアタマの中を駆け巡るなか、1806Tが発車し、駅のホーム上では通過列車を知らせるアナウンスが鳴りました。その瞬間、緊張でアタマの中は真っ白に・・・。

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日章旗をはためかせ、日暮れの中野を通過するお召し列車。
(19:07)

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引き付けて、なんとかもう一枚
日章旗ではなくサイドのJRマークに振りが合っちまった・・
・。
E655系の艶やかなボディにはネオンがクッキリ(^^;)
(
19:07)

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残念ながら特別車のブラインドは下りていました。
(19:07)

もう、無我夢中。やみくもにカメラを振ったことしか覚えていません・・・。拡大するとブレているけれど、あのハンパ無い緊張と私のウデを考えれば、まあこんなもんではないでしょうか。特別車のブラインドが下りていて両陛下の姿は確認できませんでしたが、往路ではずっとお立ちになって手を振られていたようなので、復路はゆっくりとおくつろぎになっていただきたいですよね。これでお召し列車撮影はすべて終了です。
緊張感から開放されてふと辺りを見回すと、ゆっくりとデッキの階段を下りてゆく初老デカの背中がありました・・・。(`・ω・´)ゞオシカレサマデツタ!



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