東急東横線・・・旧・渋谷駅「Station Park」 見学記 [鉄道写真撮影記]
前回の「ONE-shot」でもお伝えしたように、この週末(先週末)、東京では早くも桜が満開。と、なれば、儚くも散ってしまう前に、撮り鉄としては少しでも桜の名所で鉄道とのコラボカットを撮っておきたいところ。しかし週末に私が向かったのは、桜とはほとんど無縁とも言える、繁華街・渋谷でした。渋谷でも探せばどこかに桜の木くらいはあるのでしょうが、あえて桜を求めて来るようなところではありません。では私の目的は何かというと、桜ではなく、東急東横線の旧・渋谷駅です。大々的にニュースなどでも取り上げられていたこともあり、もうほとんどの方がご存知だとは思いますが、前週の3月16日に東急東横線と東京メトロ副都心線が相互直通乗り入れを開始。それに伴い東急東横線の渋谷駅の機能は地下の新駅へと移行され、地上(高架)にあった従来の渋谷駅は前日の15日最終電車をもって、その長い歴史に幕を閉じました。あれから一週間、その役目を終えた旧・渋谷駅に今さら何があるのかというと、実は前日の金曜日に仕事で東横線を利用した際、駅に掲げてあったこんなポスターに目が留まりました。
「TOYOKO LINE SHIBUYA Station Park」
「ありがとう」と「さよなら」の三日間
東横線渋谷駅が「公園」になる!
そう、あの旧・渋谷駅が廃止後初めて、週末の三日間(3/22~24)だけ一般開放されるのです。そこでは見学だけでなく、鉄道写真家のトークショーや鉄道グッズの販売など、様々な催しが行われるとのこと。なかでも私は、そこで限定販売される「とあるグッズ」が、とても気になります。このイベントが時期的に貴重な桜撮影よりも優先すべきものかと言われれば多少の迷いはありましたが、早咲きの桜に戸惑って、正直どこに撮影へ行こうか決めあぐねていたこともあり、ここはとりあえず渋谷のイベントへと向かうことにしました。はたして、私が気になる「とあるグッズ」とは・・・?
3月23日(土)
自宅の最寄り駅から中央線と井の頭線を乗り継いで、渋谷へ着いたのはイベント開場一時間前の9時。JRの改札脇を通り、いつもの東横線に乗るような感覚で旧駅を目指します。念のため早めに来たけれど、鉄道イベントとはいえ車両撮影会などではなく、廃駅の見学イベントなんてそんなに混雑はしないだろう・・・などと軽い気持ちで、旧駅へ続く階段を降りて行くと・・・
旧・東横線渋谷駅の開放イベント「Station Park」。
その入場口は、かつての中央改札口。
なんとすでに行列ができているではありませんか! Σ(´Д`lll)エエッ!? しかもその列の長いこと長いこと、イベント会場の入場口となる旧・中央改札付近から、駅前ロータリーを跨ぐ連絡コンコースへと伸び、最終的にはオシャレスポットとして知名度が上がりつつある「渋谷ヒカリエ」の入り口まで続いています。その長さはざっと200メートルほど。
たどり着いた最後部はヒカリエの入り口付近。
ガラスの向こうには、
かまぼこ屋根が特徴的な旧・渋谷駅の姿が見えます。
まあ、それでも入場制限になるほどの人数ではないので、会場へ入れないということはありませんが、ちょっと心配なのは私がお目当てにしている、例のグッズ。実はこれが先着1000個の限定販売、お一人さま五つまで購入可というシロモノなのです。この行列に1000人は並んでいないと思われますが、200・・・いや、300人は間違いなくいます。それがみんな複数個を買ってしまうと、私までそのグッズはまわらない可能性も・・・ドキドキ(´・Д・`;)ハラハラ。まさか、みんながみんな同じモノを目当てにしているわけではないのに、こういうときって悪い方向へ考えて、まわりがみんなライバルに見えるものなんですよね・・・(;¬_¬)ンーム…。 ちなみに聞こえてきた会話からすると、私の隣に並んだおにーさんたちのお目当ては「鉄コレ(鉄道コレクションという名の鉄道模型)」らしく、これは私のライバルではない ε-(*´ο`*)ホッ。では、斜め前の親子はというと、「ねぇ、◯◯買えるかなぁ」と子供が発言!間違いなくこの親子はライバルだ!!(# ゚皿゚)ナヌ!?・・・などと、そんなザラザラした気持ちで並ぶこと一時間。ようやく開場時間となり、列が動き出します。その流れは思ったよりもスムーズで、私も開場から10分後には入場することができました。
入場料は駅の入場券と同額の120円。
旧・自動改札にきっぷを通すようなシャレたものを
ちょっと期待していたのですが、
ふつうに手売りのチケットでした(^^;)
そもそも旧駅の自動改札機は撤去済み。
天井からぶら下がるサインボードに名残りが見られる程度。
旧・東横線渋谷駅ホームを利用したイベント会場。
ホームにはグリーンのカーペットが引かれ、
コンセプトである「公園」を意識したものになっていますが、
終端部などはそのままの状態で残されています。
旧・東急東横線 渋谷
入場して目に飛び込んできたのは、鮮やかな緑のカーペットが敷かれているものの、線路の終端部や案内板など、ほとんど変わらぬままの状態で残る東横線渋谷駅の姿。ただし、当然ながらそこに列車の姿はありません。私は旧駅の最終日にお見送りなどはしなかったし、地下へ発着するようになった東横線に乗ったときも特別な感情はなく、意外とすんなりと東横線渋谷駅の移行を受け入れることができたように思います(多少、JRからの乗り換えに不便を感じたけれど)。でもこの列車が来ない旧・渋谷駅を目の当たりにすると、やはり寂しさが込み上げて来るものです・・・(´;ω;`)
上写真とほぼ同地点から撮った、廃止(移行)前の3・4番ホーム。
このときはまだ実感が沸かなかったけれど、
本当に過去の情景になってしまったんだなぁ・・・。
13.2.3 東急東横線 渋谷(当時)
おっと、感傷に浸っている場合ではありません。見学はあとでゆっくりとすることにして、まずはお目当てのグッズを探さなくては・・・<(゚-゚=)キョロキョロ(=゚-゚)ゞ。イベント会場へ入場するにも並びましたが、今度はそのグッズを買うために、もう一度列へ並びます。会場内で売られているいろんな記念グッズのなかでも、やはりこれがいちばん人気。しかしここまでくればもう余裕で、無事に先着1000個の枠内に入って購入することができました C=(^◇^ )ホッ!。それがこちらの商品。
販売カウンターに置かれていた見本。
袋に入っているのは・・・石!?
一体コレは何かというと、旧・渋谷駅構内に敷かれていたバラスト、いわゆる線路の敷石です。え!?コレが並んででも欲しかったものなの?(・ε・`)エー!? ・・・と、読んでいて、ちょっと拍子抜けしてしまった方もいるでしょう。たしかに旧・渋谷駅にまつわるものではあるけれど、石は石。「渋谷」の文字が彫んであるわけでもなく、どこで拾ってきたって同じようなもの。それでも記念に欲しいという方は多いのかもしれないけれど、私はそれほど石に思い入れはありません。ではなぜ買ったのか・・・実は私が興味を持ったのは、その販売システムにあります。何を隠そう、この商品は袋だけを先に購入して、あとは自分自身で中身を詰める、「詰め放題」システム。敷石であるバラストは線路に敷かれているものですから、当然それを拾うには線路へ下りなくてはなりません。つまりこの「バラスト詰め放題」を買うと、ホーム上から線路へ下りられる権利も同時に得ることができるということになります。廃駅になったとはいえ、あの東横線渋谷駅の線路上に下りられるなんて、とても貴重な体験ではありませんか! まるで前日に放映されていた、深夜のバラエティー番組「T倶楽部」みたい・・・(笑)。ちなみに一袋購入で二人までが線路に下りることができ、袋を持っていないと線路に下りることはできません。さっそく購入した袋を持って、ホームの先端部(代官山方)へ。
緑のカーペットが敷いてあったメイン会場の奥は、
今でもホームや線路がそのまま残されていました。
降車ホームとして使われていた5番ホームを
先端へ向かって進みます。
ホーム先端部には仮設の階段が付けられて、
安全に線路上へ下りることができます。
8日前まで頻繁に列車が行き交っていた線路上へ・・・。
もちろん営業中には考えられなかったことです。
端から代官山方を臨んでみます。
分岐器を介していくつもの線路が複雑に混じり合いますが、
ここを列車が走ることは二度とありません。
廃止から一週間、すでに線路は錆び付いていました。
線路上に下りて、旧・渋谷駅に思いを馳せる参加者たち。
やはり石拾いよりも写真撮影など記録を主にしていた方が
多かったように思います。
線路上へ下りると、私は本来の目的であるバラスト拾いを忘れて、ひたすらに写真を撮りまくり。そう、この線路上からの渋谷駅が見たかったからこそ、朝から行列に並んでバラスト袋を買ったのです。営業最終日の記録などに比べたら、もう列車の来ない廃駅の写真などつまらないものですが、それでも駅ならではの心惹かれる情景が、まだこの旧・渋谷駅には多く残されていました。そこで、ここからは撮った写真のいくつかを、スナップ風にご紹介してゆきたいと思います。題して「旧東横線渋谷駅・MONOCHROME-SNAP」。
列車のいない、地上の旧駅。
想い出のカケラを袋につめて・・・。
輝きを失ったレール。
閑散としたプラットホーム。
東横線のホームはいつも人が多くて、
とても狭く感じたものです。
南口へと続く階段。
実は中央改札より使う頻度が多かったかも。
多くの人が見上げてきた数々の案内板も
もう点灯することはありません。
東横線渋谷駅、二つの時代を跨いだ駅長の敬礼。
東急桜木町駅を知らない子供たち。
いずれは地上にあった渋谷駅も忘却の彼方に?
ありがとうの記念品。
渋谷を記録しつづけてきた鉄道写真家・中井先生。
壁には作品が飾られ、
ご本人のトークショーも行われました。
その頭上には3・4番ホームの電光案内板が・・・。
廃止から一週間、
この日は現役当時さながらの賑わいを見せた、旧・渋谷駅。
今後ここはどうなるのでしょうか?
さよなら東横線渋谷駅。
もうここを駅として訪れることはないでしょう。
写真はすべて、13.3.23 東急東横線 旧・渋谷にて。
・・・ガラにもない構成で、スミマセン(^^;)。でも、駅は列車があって初めて機能する施設。その主を失った駅は華がなく、これを表現するにはモノクロの方が合っているのではなかと思い、大半が撮影時点でカメラをモノクロモードに設定しました(一部、撮影後にモノクロ処理)。
ところであの「バラスト詰め放題」、なかにはスーパーマーケットの「野菜詰め放題セール」よろしく、袋の口がギリギリ締まるまで詰め込んでいた人もいらっしゃいましたが、聞いた話だとあの袋に目一杯石を詰めると、約5キロにもなるのだそうな。私は三分の一程度までしか入れなかったけれど、それでも約二キロ。この日はドンケのショルダーバッグに24~105ミリのズームを付けたデジイチ一台のみという軽装だったのに、このバラスト袋を入れたおかげで、結局いつもの望遠レンズと同じくらいの重さがバッグ内に加わりました・・・(´Д`;)重っ。
そんな石の入ったカメラバックを担いで私が次にやって来たのは、渋谷から山手線で三つ目の五反田。冒頭にも書いたように、週末の都内は桜がちょうど見頃を迎えています。そこでせっかくならば、近場で少しでも「桜鉄」を楽しんでゆくことにしました。もちろんここからはカラーに戻ります(^^;)。
ほぼ満開となった桜の奥に顔を出したのは、
東急池上線の7700系。
7000系時代から数えると、今年で51年目の花見です(^^)。
東急池上線 五反田-大崎広小路
五反田駅の横を流れる目黒川沿いには桜並木があり、ウマく列車と絡めて撮影することができます。ここでの狙いは高架橋で目黒川を跨ぐ東急池上線の車両。しかし午前中は東横線渋谷駅のイベントに顔を出したし、考えてみたら前回の「ONE-shot」も車両こそ副都心線の10000系だったものの、撮影したのは東横線の中目黒。いくら最近話題が多いといっても、ちょっと東急に偏りすぎてはいないかって? 実はこの撮影地、池上線を撮った同ポジションで90度「まわれ右」をすると、JRの山手線、山手貨物線(湘南新宿ライン・埼京線)も撮ることができるのです。
桜に包まれる、湘南新宿ラインのE231系。
特徴的なダブルデッカー車でパチリ。o[◎]_- )パシャ
山手線 五反田-大崎
しかもこのようにJR側のアングルでも桜とのコラボが楽しめて、「桜鉄」をするのになんとも効率がいい撮影地ではありませんか。この両線を比べると、アングル的には多くの桜が入る池上線がキレイだけれど、列車的には多くの車種が走るJRの方が楽しいかもしれません。そして今の山手線といえば、注目すべき記念列車が走っていますよね。そう、山手線のウグイスカラー(黄緑)50周年を記念した「みどりの山手線」。今年一年の限定で運転されているこの電車、当然ながら桜とのコラボも今春限り。じゃあ、いつ撮るか・・・今でしょう~ヽ(´▽`)ノ! ってことで、JR側を向いて待つことしばし・・・。
今年の春限定!
「みどりの山手線」が桜をかすめて快走!
「みどりの山手線」と桜のコラボが撮れました~ヽ(≧▽≦★)ノワーイ! 。久しぶりの流し撮り、しかも桜の木でブラインドされた難しい状態でしたが、なんとか写し止める事ができて一安心。ちなみに、しばらく某飲料メーカーの「お茶ラッピング」が施されていた「みどりの山手線」、この週からは元のノーマルな「50周年仕様」に戻されました。やっぱり記念列車なのですから、広告は入らない方がいいですよね (^^;)。
続けてシャッタスピードはそのままに、
今度は列車の方を流してみます。
同じアングル、設定でも、撮り方によって、
見え方が変わるのは面白いものです。
JR側の本命だった「みどりの山手線」が撮れたので、再び池上線側へカメラを向けます。しかし最初に7700系を撮った頃には晴れていた空は、「みどりの山手線」を待っている間に曇ってしまい、以降この日は再び青空が覗くことはありませんでした。まあ、この季節は「花曇り」とう言葉があるくらいですから、曇り空でもヨシとしますか・・・。
先ほどはタテで撮ったので今度はヨコ位置。
やってきたのは赤帯がアクセントになる1000系。
東急池上線 五反田-大崎広小路
親子でお花見かな?
でもボクは電車の方に夢中みたい(^^)。
「みどりの山手線」同様、この池上線にも名車7000系の登場当時を復刻した「7700系・クラシックスタイル」という特別な編成が一本だけあります。できればそれも撮りたいな~などと思うも、なかなかそうウマくはいかず、結果から言うとこの日の池上線で「クラシックスタイル」は運転されていなかったみたい。でも、そうとは知らずにしばらく池上線撮影に集中していると、突然JR側から「ダダダダダダン」と、何やら聞き慣れない轟音が響いてくるではありませんか。思わず振り返ると・・・そこには単機のEF65PFが! Σ(゚□゚*)ナニーッ!
国鉄色EF65と桜のコラボは
かつての東海道ブルトレ牽引を彷彿とさせる・・・
って、さすがにムリがあるか (^^;)ゞ
山手線 五反田-大崎
咄嗟にカメラを振ったものの、やはり流し撮りは合わずに撃沈・・・orz(あまりにも情けないカットだったので、小さめに紹介します ^^;)。やはり線路端に立った以上は常に神経を尖らせて、どんな条件にも落ち着いて対処できる冷静さが欲しいものです・・・。な~んて思っていた矢先、通りすがりの方に桜との記念写真を頼まれて応対していると、再び背後から通過する列車の音が。ただし今度はカマ(機関車)では無く、電車っぽい軽い音だったので、まあ埼京線の205でも来たのかと、記念撮影後にカメラを返却して振り返ると・・・ふだんはこの区間で見られないハズの211系が!Σ(゚□ ゚(゚□゚*)ナ、ナニーッ!!
思いがけず山手貨物線で遭遇した211系。
先のダイヤ改正で運転を終了した
宇都宮線用車両の疎開回送あたりかな?
慌てながらも、とりあえず211系だということがわかるように、先頭車同士の連結部を狙ってみましたが、なんとも中途半端でビミョーな出来。やはり線路端に立った以上は・・・(以下略)。そんなサプライズが二度もあった山手貨物線。しかしこの日はまだ、これだけでは終わりませんでした。一時間ほど待ってみたものの池上線の「クラシックスタイル」は現れなかったので撤収を決め、最後に何かに使えるかもしれないと、列車を入れずに桜の花のアップなどを撮っていたところ、そこに現れたのは・・・国鉄特急色の183系! Σ(゚□ ゚(゚□ ゚(゚□゚*)ナ、ナ、ナニーッ!!!
桜を横目に走り抜ける特急色183系。
団体?回送? 詳しくは解りません・・・。
山手線 五反田-大崎(後追い)
でも今度は落ち着いて花の方にピントを合わせ、後追いですが先頭車をキッチリ納めることができました。しかもこの桜を手前に配したアングル、咄嗟にカメラを構えたにしては案外悪くない。むしろ今までの自分にはあまりなかったような撮り方で、思いがけず新境地の発掘か? ならば、まもなくやってくる、二周目のこの電車も同じようなアングルで撮影してみることに。
桜とみどりの電車のコラボレーション。
やはり緑一色の電車は存在感があります!
これにて撮影終了。当初の予定では東横線渋谷駅見学のついでに、ちょこっと寄るつもりだった五反田の桜撮影。まさか同ポイントで一時間以上も粘って、二回も「みどりの山手線」を見ることになるとは思っていませんでしたが、なかなか春らしくて面白い絵を残すことができました。ただ残念だったのは曇り空だったこと。でも、もう今週末にはこの桜は散ってしまって、晴天でのリベンジは難しいだろうなぁ・・・(今週末もあまり天気は良く無さそうだし)。
旧・東横線渋谷駅のスナップ、そして五反田での桜鉄。今回は列車の車両的な収穫よりも、なんだか写真の勉強として得るものが多かった気がする撮影記でした(^^)。